研究デザインの紹介!統計解析する前に理解しておきたい研究デザインの話

数値ばっかり見てたら、なんのためにやってるか分からなくなってきました

それは本末転倒ですね

そうなんです。

統計解析する前も後も、自分の研究がどんなものかしっかり考えましょう

研究のデザインについて知ろう

研究計画を進めたり、統計解析をしたりする上で、自分の研究のデザインを知っておくことはとても大切です。

研究のデザインと、その例を参考にしながら理解を深めましょう。

生態学的研究について

生態学的研究は、仮説をつくる研究デザインです。

すでに取得したデータ(既存資料)を利用します。

例えば、疾患Aの有病率が①の地域で高いといった既存資料があったとします。また、別の既存資料では、地域①の栄養素Aの摂取量が多かったことが報告されています。

この2つの既存資料から、「疾患Aと栄養素Aに関連がありそうだ」といった仮説を立てる研究になります。

既存資料を使うので、調査は短期間で終わりますが、大まかな関連しかわかりません。

この研究の仮説を元に、他の研究によって検証していくといった流れになります。

普通イメージする研究は、対象者を例えば10人集めて、10人の年齢や体重の平均値を比べたりしますが、地域相関研究ではこの対象”者”の人が、国とか都道府県とかの”地域”になるようなイメージです。

例えば、東海地方グループの愛知、三重、静岡、岐阜の4件の有病率と、関西地方グループの大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県の2府4県を比較するような感じです。

そういったデータは総務省統計局のe-statから簡単に入手できますよ!

横断研究について

横断研究は、関連性を見るための研究デザインです。

ある一時点の原因と結果を同時に測定するので、関連はわかりますが、どちらが先(原因)でどちらが後(結果)かといった因果関係を示すことはできません。

横断研究のイメージです。

疾患Aの人は、栄養素Aの摂取量(丸の大きさで表現)も多いことが分かりますが、疾患Aだから栄養素Aを多く摂取しているのか、それとも栄養素Aを多く摂取しているから疾患Aになるのかはわかりません。

このように、横断研究なのでどっちが原因で、どっちが結果といった因果関係がわかりません。

そのために、横断研究は結論があいまいで、エビデンスレベルは低くなってしまいます

コホート研究について

コホート研究は、因果関係を見るための研究デザインです。

特徴的なのは現在疾病を有していない者(結果が生じていない者)を対象とし、曝露因子、つまり原因の有無で群を分けて一定時間観察し、結果の違いを比較します。

原因→結果の時間的関係があるので因果関係を示すことができます。

ただ、1000人に1人といった罹患率の疾病の調査では、多くの人と期間を必要としてしまいます(100人の結果を出すのに10万人必要)。

コホート研究のイメージです。

現在、結果(疾患A)がない人を、原因の有無(栄養素Aの摂取量が多いか少ないか)で群分けし、未来に向かって観察(見ているだけ)します。

観察期間中の結果の発生率などを比較して、因果関係を示すことができます。

症例対象研究について

症例対象研究は、まれな疾患に対して有効な研究デザインです。

現在目的とする疾患(結果)を有する者を連れてきます。1000人に1人の疾患であっても、日本には何人もいるので、集めることはできます。

そして、それに合うような疾患(結果)を有意していない対照群を用意して、過去について比較します。

結果←原因といった時間的関係があるので、因果関係を示すことができます。

症例群を10人集め、対照群を10人用意したとしましょう。だから全員で20人で、そのうち10人が疾患を持っているので罹患率は50%!なんてことは当然できません。

症例対象研究のイメージです。

現在から過去に向かって調査を行います。過去のことを聞き取る際に、思い出した情報が不正確になってしまう情報バイアス(の中の思い出しバイアス)に注意が必要です。

介入研究について

介入研究は、介入により直接因果関係を示す研究デザインです。

介入研究には、対象者を無作為(ランダム)に群分けする無作為比較試験(RCT)、無作為割付を行わない非無作為比較試験、介入群と対照群を途中で入れ替えるクロスオーバー試験があります。

RCTはエビデンスレベルも高く、バイアスを制御するための優れた研究デザインです。

RCTのイメージです。

無作為割付をしているので、研究開始時点の両群は、まったく同じ集団とみなすことができます(バイアスがかかっていない)。

そして、まったく同じ2つの集団で、唯一違うのは介入があるかないかというようにします。その状況で介入を続け、将来結果が起こるかどうかを比較します。

2つの群で異なるのは介入の有無だけなので、介入の有無と結果の因果関係を直接かつ明確に示すことができます。

ただ、このイメージのようなことは絶対にできません。なぜかわかりますか?

栄養素Aを食べさせると疾患Aが発生するような、対象者にとってデメリットになる人体実験のような研究は倫理的に認められません。人にとって利益となるようなデザインにする必要があります。

介入研究を計画する上で、前後比較研究になっていないかどうか注意する必要があります。

前後比較研究は、同一被験者の介入前後を比較する研究デザインのことです。

上の図のように、例え対照とした期間における結果が、介入により変化したとしても、この研究デザインでは時間経過の影響を考慮できません。

つまり、介入前は4回であった発熱が、介入により1回に減ったとしても、介入の効果なのか、病気が回復してきたからなのか分からなくなってしまいます。

このデザインはダメだという訳ではありませんが、介入しているにもかかわらず、エビデンスレベルは症例対象研究と同等と、かなり低くなってしまいます。

対象となる患者さんのことを思うなら、できるだけ避けるべきデザインといえるでしょう。

また、介入研究にはこんな方法もあります。

ヒストリカルコントロールといって、過去のデータや既存データを対象として用いる方法です。

実務上、全員に介入する必要があったりすることはよくあると思います。

たとえばNPの配属効果を調べるときに、配属された時点でその病院の患者さんは配属という介入をうけてしまいます。そうすると同時に対照群を取ることができません。

そういった場合に、配属される前の過去のデータを対照とするような研究デザインです。過去でもいいですし、同規模の他の病院などのデータでも大丈夫です。

ただし、対照群の取り方によっては、バイアスがかかってしまう場合もあるので注意しましょう。

統計解析をする上で気を付けること

統計解析をする上で、研究デザインについて特に気を付けなければいけないのは、相関関係か因果関係かの違いです。

生態学的研究(地域相関研究)と横断研究は、時間的関係が不明なので相関関係しかわかりません

症例対象研究、コホート研究、介入研究は因果関係を示せますが、特に症例対象研究とコホート研究ではバイアスと交絡が問題になります。

バイアスと交絡についてはある程度、統計解析の段階で対応することもできます。

ぜひ、バイアスと交絡についても学んでみてください!

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